愛と寛容に溢れた「ソーシャルグッド」な社会を目指して ー株式会社クラダシ 代表関藤様インタビュー

愛と寛容に溢れた「ソーシャルグッド」な社会を目指して ー株式会社クラダシ 代表関藤様インタビュー

「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」をミッションに掲げフードロス削減を目指す、株式会社クラダシ。

賞味期限間近な商品や、3分の1ルール(製造日から賞味期限までの期間を3等分し、納品・販売期限を設ける商慣習)を過ぎてしまった商品を、ショッピングサイト「Kuradashi」を通じてお得にお客様へお届けしています。売上の一部を社会貢献活動に充てるなど、広く社会問題の解決を目指す企業です。

 

アエナとクラダシ、両社共通の「捨てるをなくす」という願いの実現について、今回は代表取締役社長の関藤竜也様にお話を伺いました。

 

※インタビュー内容、役職、所属は取材当時のものです。

 

 

▼インタビュイープロフィール

 

株式会社クラダシ 代表取締役社長 

関藤 竜也(せきとう・たつや)さま

 

「ソーシャルグッドカンパニー」クラダシ

 

ーーまずはクラダシ創業のきっかけから、お話を聞かせてください。

関藤さま

クラダシを作ろうと思ったきっかけは二つあって、一つ目は、阪神淡路大震災で被災した経験です。大学4年生の時で自身も被災者でしたが、「放っておけない」と感じリュックサックを背負って飛び出していきました。誰より早く着きましたが私一人の力では何もできず、インフラは機能しなくなり建物も崩壊し、人々の精神も疲弊していきました。負の連鎖が起きていたんです。

 

二つ目は、商社時代に中国に駐在していたときの出来事です。メイドインチャイナが世の中に溢れたころで、大量流通・大量生産・大量消費の裏側にある大量廃棄の現場を目の当たりにしました。

 

こんな経験を経て、「一人ではなく、事業で」「行政でも非営利団体でもなく、ビジネスで」社会課題と向き合おうとクラダシの構想を練り始めました。クラダシは、世の中のバランサーとして社会課題をビジネスで解決していくことにこだわっているんです。

ーーだからクラダシのミッションは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」なんですね。

関藤さま

社会課題を解決するには継続した活動が必要です。ビジネスとして展開することで、更なる課題解決に向けた事業拡大の再投資などスピーディーに意思決定することができます。社会性・環境性・経済性の三つの合理性を成り立たせることができるんです。

 

ちなみにビジョンでは「日本で最もフードロスを削減する会社」と掲げています。

数ある社会問題でもフードロスは、賞味期限問題、物流問題、健康問題、環境問題と密接に絡み合っています。なかなか難しい課題だと思ったからこそ、この問題に絞りました。

ビジネスの力で、持続的にフードロス問題の解決に貢献できるということが我々の強みだと思います。

ーー今回ご縁がありこの場を設けられたのも、両社の「捨てるをなくす」への想いが一致したからだと考えています。関藤さまは、「捨てるをなくす」が社会にどんなインパクトをもたらすとお考えでしょうか。

関藤さま

「捨てるをなくす」は色んなことを救いますよ。まずは、廃棄を防げたことによる物質的な価値。そして、製造や流通過程に関わってきた人々の想いも無駄にならないです。

 

また、消費の一つのかたちとして「捨てるをなくす」は一つの価値になると思います。エシカル消費なんて言葉がよく使われますが、これも数十年前は耳にしなかった言葉です。

これからはそもそも無駄を出さない生産・消費の形に変わっていくだろうし、私たちもムーブメントを作りつつ、煽りつつ、乗っかりつつで広めていきたいですね。

ーーまだまだ可能性が広がりますね。同じ未来を見ている企業様とお話しできる喜びを、改めて感じました。

 

「クラチャレ」から広がる人の営み

 

ーー関藤さまはオフの日は釣りをされると聞きました!

関藤さま

そうなんです。釣りが好きで30年程前からよく地方へ行っては早朝から海に出て、地元の生産者の方とお話をするんです。「今日はどう?」「油が高いね~釣れないね~!」なんて話しをしたりして。

彼らから学ぶのは、人の営みです。自分たちは釣ってくるだけだけど、売ってくれる人がいて、買ってくれる人がいて、それで食卓に届くんよ〜、と。そんな想いって、コンビニのおにぎりからはなかなか感じられないですよね。

今はスピードが評価される時代だからこそ、こういった想いは置き去りになってしまいがちです。だからこそ私たちは売上にフルコミットして、社会支援を何より最優先に考えているんです。

ーー地方のお話を聞くと、「クラダシチャレンジ」が思い浮かびます。こちらについて詳しくお話聞かせてください!

関藤さま

私たちは、「クラチャレ」と呼んでいます!この「クラチャレ」はクラダシが運営する、社会貢献型インターンシップです。高齢化・人口減に悩む生産者のもとへ、地方創生やフードロス問題に興味のある学生が訪問するプログラムで、未収穫となったままの作物を学生と一緒に収穫するなどして、フードロスの削減を目指しています。

一次産業の難しい所は、生産量が増えすぎても少なすぎても問題があることです。一定の収穫を続けなければならないのに、生産者は高齢で長時間しゃがむこともできない。
作物はまだまだあるが収穫できず困っている生産者と、体力が有り余っている元気な若者の凸と凹をマッチングさせています。ここでも人の想いが広がっていったらと思っています。

ーークラダシを知れば知るほど、愛情深いビジネスだなと思います。ビジネスとしての持続性も持ちつつ、お客様へも、お取引先にも、社会に対しても愛に溢れた仕組みだなと思います。

関藤さま

そこを感じ取ってくれるのは嬉しいことです。オフと似た言葉に「ロス」がありますが、世の中にはロスが溢れています。ものがもったいないもそうだし、コミュニケーションロスもありますよね。

コロナを通して、色んなものが見えてきたと思うんです。人の心も、地方も弱ったところから崩れていってしまう。我々はコミュニケーションを主とする会社ではありませんが、人の心をもっと拾えるんじゃないかということはいつも考えています。

 

世の中の「気づき」をデザインする

ーー店舗へ時々遊びに行くのですが、そこの支援コーナーが好きなんです。(Kuradashi たまプラーザ テラス店では、1会計あたり1つの団体に支援が可能)

なんとなくお買い物をした方も、スタッフの方に案内をされて、支援コーナーに足を運ばれていて。「ワンちゃん飼っているから、動物愛護のところにしようかな〜」なんて会話も聞こえてきて、普段は社会支援に縁がない人の間で会話が生まれている様子をみると凄く嬉しくなるんです。

関藤さま

きっかけを作ることは、クラダシの根幹にあります。例えばフードロスという観点でいくと、どこの親も「ご飯を残さないよ!捨てないよ!」って指導しますよね。「捨てなさい!」なんていう大人はいないはずです。風刺的にいうのであれば、「大人のほうが捨ててるで!」と言われてしまうような時代です。

 

「そんなに捨てている気はないけれど、いつの間にかみんな捨てている」ということに改めて気づいてほしいんです。人々の気づきになり、親の教えたいことがクラダシを通して体現されていて。例えば先ほどの支援コーナーで親子で廃棄について考える会話が生まれていたら、それはもう教育ですよね。

ーーその切り口で行くと、クラダシのショッピングサイトでお買い物をするとどのくらい廃棄問題の解決に貢献できたか数字で見ることが出来ますよね。これも「気付き」のひとつですね。

関藤さま

可視化にはこだわって、当初からやってきましたね。頂いてきた賞もそうですし、「クラチャレ」の元手となるクラダシ基金も一つの可視化です。またフードロス削減量でも、おにぎりに例えると何個分?CO2削減量だと?と様々な切り口で表現しています。

 

良いことをしてくださっている皆様に対して透明性を持ち続ける意味もありますが、先ほどの気づきになるようにお伝えしています。

「あなたのお買い物でこんなにCO2が減りました!」と言われたら嬉しくなりますよね。ショッピングサイトだからこそ人の気持ちに触れる仕組みにしています。

 

また、Kuradashiの特徴として1商品あたりの個数が多いんですよ。同一商品が12個セットで届いたりするわけです。一家庭で消費するのも良いけれど、ご近所さんやみんなで集まったときに分け合うようなスタイルが広まっていったら嬉しいですね。「Kuradashi買い」、のような!またそこから輪が広がれば嬉しいなと思います。

ーー優しい気づきだな、と感じます。この気づきを得た人からまた「捨てるをなくす」連鎖が始まっていくんですね。

関藤さま

自分は何かを我慢して、人のために社会貢献を頑張る!って変な話じゃないですか。そうではなくて、自分のためにやっていくことが結果として人や世の中のためになるほうが良いですよね。

 

 

捨てるをなくす、について考える。

 

ーー最後に改めて「捨てるをなくす」について考えていきたいです。これからの日本はどう進んでいくべきでしょうか。

関藤さま

私がもし日本国民に何かを伝えることが出来るのであれば、「寛容性を持つべきだ」と伝えたいです。今は多様性の時代です。みんなが広い目を持っていくことで、本来不要なロスも防げるのかなと考えています。

 

とはいっても人にお願いする話ではないですよね。だからこそ、みんなが自分で気づいてもらうための戦略を立てていく必要があります。

 

フードロスなんて言葉がなかった時代、いわゆる「おつとめ品」を買うのが恥ずかしいという風潮がありました。都内のちょっと良いスーパーに夕方に行って、割引シールが貼られても誰も買っていかないんですよね。安くていいじゃない!と思うけれど、手を伸ばせなかったんでしょう。

 

でも「フードロス」「フードレスキュー」なんて言葉がつけられた今、みんな気軽に買うようになっています。「その食材買ってくれたの!ナイスだね!」と言われたら、嬉しくお買物ができるじゃないですか。

ーーおっしゃるとおり、そんな風に言ってもらえたら普段のお買い物ひとつでも感じ方が変わってきますね。

関藤さま

お値段はオフでも気持ちはオンにしていきたいですね。今までの話でも共通して言えるのは、「人のために」です。だからこそ、クラダシもより分かりやすいものにしていきたいし、使っていただければいただくほど広く社会に浸透していくようなものにしていきたいです。

ーーこれからのお買い物のかたちですね。アエナもこの取り組みを社会に広めていこうと感じました。

関藤さま

私たちを通したお買物が「社会にいいこと」だと広めていきたいですね。意識高い系って、なんだか白い目で見られる世の中じゃないですか。かっこいいパソコンを使ってかっこいい車に乗っている。でも排気ガスは沢山出してるやん!ではなく、アエナおよびクラダシで社会にいいお買い物をしているのが素敵!と思ってもらえるような社会を作っていきたいですね。