お米のすべてを資源に!岩塚製菓が挑むサステナブル農業

お米のすべてを資源に!岩塚製菓が挑むサステナブル農業

新潟県長岡市で創業し、現在も同市に本社を構える岩塚製菓株式会社は、地元とお米への深い愛情に根ざしたものづくりを続ける米菓メーカーです。
今回は、同社が参画する「N.CYCLE」プロジェクトについてお話を伺いました。
企業だけでなく、地元農家の方々とも連携して進められているこの取り組みでは、米菓の製造過程でこれまで廃棄されてきた資源を再利用し、より良いお米の育成環境づくりに役立てています。

アエナも「捨てるをなくす」というミッションのもと、オフプライスストアとして廃棄削減に取り組んでおり、食品や資源の価値を最大限活かすという点で、両社には共通の想いがあります。

▼インタビュイープロフィール
岩塚製菓株式会社 サステナビリティ推進室 
畳谷和之(じょうたに・かずゆき)さま

▼岩塚製菓株式会社とは?

新潟県長岡市に本社を構える米菓メーカー。
「お米となかよし 岩塚製菓」をキャッチコピーに、すべての商品で日本のお米を100%使用。「味しらべ」「田舎のおかき」などの代表的な商品をはじめ、安全・安心でおいしい米菓をお届けしています。

 

創業から受け継ぐ“おいしい米”を原料とするこだわり。

ーー本日はよろしくお願いいたします!
御社の「味しらべ」の大ファンなので、お話を伺えることをとても楽しみにしていました。
おいしさの秘訣は、やはり“日本のお米100%使用”という点でしょうか。

畳谷さま

ありがとうございます。「味しらべ」は、弊社の中でも特に人気の高い商品です。おっしゃるとおり、2014年以降はすべての商品で日本産米100%にこだわっています。
おいしさの秘訣にはさまざまな工夫がありますが、やはり良い原料を使用していることが大きいです。
創業当初から「原料より良いものはできない。だからこそ、良い原料を使わなければならない」という考えが、代々受け継がれてきました。

ーー創業当初から変わらない想いを受け継いでいるのですね。日本の中でも、やはり地元・長岡のお米を多く使っているのでしょうか。

畳谷さま

もちろん、すべてが長岡産というわけではありませんが、使用の割合は多いですね。
契約農家さんが複数いらっしゃるので、米菓づくりに欠かせないおいしい長岡のお米を提供していただいています。

地域で採れたものを食べることは、その地域を応援することにもつながると考えています。
国産にこだわることは、ある意味で日本のインフラを支える活動のひとつとも言えるのではないでしょうか。
少しスケールの大きな話にはなってしまいますが(笑)

ーー長岡への愛があふれていますね!
最近はお米の不足が社会的な問題にもなっているので、原料であるお米の確保にもご苦労があるのではないでしょうか。

畳谷さま

そうですね。気候変動の影響も大きく、雨が降らなかったり、逆に降りすぎてしまったり。もちろん、稲が病気になってしまうリスクも常にあります。

農家さんたちも、苦労しながらお米を育ててくださっています。

 

また、収益性の問題から、農業後継者も少なくなっています。

だからこそ、少しでも畑の収益性を高めることが重要なんです。

ーー“畑の収益性”というのは、消費者の目線から考えると目からうろこでした。

農家さんの収入に直結するので、確かに大きな問題ですよね。

畳谷さま

同じ面積の畑でも、品質が高く、より多くのお米が収穫できた方が、農家さんにとってはもちろん嬉しいことです。

私たちも米文化をつないでいくために、米菓を少しでも多くの皆さんにお届けしたいという想いを持っています。

 

そこで、「ゆきみらい」という、新潟県・地元JA・岩塚製菓が連携して開発したもち米の新品種を契約農家さんに育てていただいています。

「ゆきみらい」は早生(収穫時期が早い品種)で、多収穫米(単位面積当たりの収穫量が多い)であることに加え、病気にも強いんです。

ーー「ゆきみらい」を広めていくことが、農家さんのメリットになり、地域農業の活性化にもつながるということですね。

 

N.CYCLEで目指すのは“産地育成”と“土づくり”

ーーそんな地元の農家さんたちとも協力しながら取り組んでいるN.CYCLEプロジェクトとは、どのような活動なのでしょうか。

畳谷さま

このプロジェクトは、地域の農業団体、企業、大学、自治体などが協力し合い、“サステナブルな農業の推進”や“元気な田んぼをつくり、米文化を未来へ伝える”ことを目的に活動しています。

 

2021年の秋ごろにスタートしたプロジェクトですが、

「米菓の生産工程で出るお米のとぎ汁を活用できないか」と考えたことが参画のきっかけです。実は、お米のとぎ汁にはタンパク質やでんぷんがたっぷり含まれていて、肥料の代わりになるほどなんです!

これをただ「捨てる」のではなく、土づくりに生かしたいと考えました。

ーー弊社も同じように「捨てるをなくす」というメッセージを掲げているので、とても興味深い取り組みです。

 

畳谷さん

当初考えていたとぎ汁の活用は難易度が高く、まだ実用化には至っていませんが、代わりにお米のもみ殻をペレット化した堆肥づくりに成功しました。
今まで廃棄されていたもみ殻を活用することで、温室効果ガスの抑制だけでなく、農家さんの有機肥料購入の負担軽減にもつながっています。

ーー生産されたお米を余すことなく活用し、さらに新たなお米づくりへとつなげていく――まさにサステナブルな循環が生まれているのですね。

 

畳谷さま

資源循環によって育まれたお米は、実際に私たちの商品にも取り入れています。
ただ、私たちはこの循環を通じて「N.CYCLE米」といった特別なブランド米をつくりたいと考えているわけではありません。

大切にしているのは、長岡全体の土が健やかに育ち、質の良いお米がたくさん収穫できるようになること。そして、その循環がさらに広がっていくことを願っています。

 

長岡、新潟、そして日本へ。持続可能な米づくりを未来に 

ーー長岡での育成や土づくりの大切さについてお話がありましたが、今後の展望についても教えてください。

畳谷さま

N.CYCLEプロジェクトによって、岩塚製菓だけでは実現できなかった取り組みを、技術や知見を持つ多くの方々の協力を得ながら、資源循環の取り組みとして始めることができました。
「N.CYCLE」の“N”は、Nagaoka、Niigata、Nippon――それぞれの頭文字からとりました。

まずは地元・長岡からですが、いずれは新潟全体、そして日本の米産業の発展に少しでも貢献できたらと考えています。

ーー長岡から新潟、そして日本へ。米産業を未来につなぐ素敵な取り組みです。

最後に、今後特に力を入れていきたい取り組みについて教えてください。

畳谷さま

これからは、土づくりを基本とした農業を広めていくことが必要だと思っています。化学肥料に頼りすぎず、土をしっかりと育てること。
資源を循環させながら、環境にやさしい農業を推進していくことが目標です。
土づくりは1年や2年で成果が見えるものではありませんが、だからこそ、着実に取り組みを続けていきたいです。